Mwenge Keikoのつれづれ日記

アフリカの人びとや文化の出会いを通して

スパイスから学ぶ

 南アフリカにはいろんな民族の人たちがいる。それぞれの民族にはそれぞれの歴史と文化があり、南アフリカに行く度に、新たな発見がある。南アフリカにいながら、ヨーロッパ、アジア、アフリカを体験することになる。最近ではインド系の人たちとのつきあいが長くなり、一緒に料理を作って食事をする機会が多くある。気軽に材料を持ち寄り、3〜4人でそれぞれが思い思いの料理を作る。誰かの台所で作ることになるが、どこも広々とした台所で、誰もがどこにお鍋があり、どこにナイフがあるか知っている。女どうしが台所でおしゃべりをしながら、あれこれの料理を作っていく。まさに、Kitchen Tableを囲んだ女どうしの場で、アメリカ黒人女性バーバラ・スミスが1980年に始めた"Kitchen Table"出版社を思い出した。
 日曜日のランチを一緒に食べようと誘ってくれた。ケープタウンから50キロ東にあるステレンボッシュの友人の家に女3人で行くことになった。広々とした台所から外に見えるステレンボッシュの山々はまだまだ冬の気配だ。着くなり、ブラミは持参のお鍋でフィッシュ・カレーを作りはじめた。私はいつものように巻き寿司を持参。南アフリカでは大好評なので朝に作っておいた。すばやくお皿に盛りつけて、大きなKitchen Tableの上におく。その横にはフランスパンとチーズがおいてある。料理を作りながら、スターターとしてお寿司をつまんだり、パンを食べたりしながら、カレーができるのを待つ。ブラミのカレーは、ガーリックとタマネギのみじん切りをオイルのなかで素早く炒める。その間、私はトマトを下し金ですりおろす。急いでいるときはトマトをすりおろすのがいいそうだ。そしてトマトを入れ、静かにオイルが表面にあがってくるまで、かき混ぜないで辛抱強くまつ。
 カルダモン、コリアンダー、クミン、ペパーなどをすりつぶして、マサラやチリなどと一緒に鍋に入れる。そしてじっくりと煮詰めてから、最後に魚の切り身を入れる。
 カレーができたあと、シブスは5分で料理を作った。エビをガーリックオイルでフライをするだけだったが、エビに塩こしょうとマサラで下ごしらえをして、1時間ほど冷蔵庫の中に入れていた。ほかには常備食なのか、ビーンカレーも出来上がっていた。カレーもいろんな種類があり、それぞれに違う味がする。同じメンバーで何度も食事をする機会があったが、それぞれの家のカレー味があり、バラエティに富んでいるので、飽きることはなかった。
 私が作るカレーは同じ味になってしまうが、スパイスの使い方がどうも違うようだ。私は南アフリカに行く度に、ダーバンでは市場で、ケープタウンではアスロンかボーカップで、ヨハネスブルクではメイフェアでスパイスを買ってくる。手当たり次第にスパイスをカレーに入れるので、メリハリの効かないものになってしまう。
 今回はヨハネスブルクでボビーの手ほどきを受け、どんなスパイスをどれだけ入れるかをきっちりと教わった。ボビーからはIndian Delightsという本ももらった。ボビーは娘から料理のレシピーを聞かれた機会に、本格的に料理を学び始めたという。40数年も学んでこなかったが、いまは料理を作るのが楽しいという。娘は母親のシャミンに料理のレシピーを尋ねないのも、面白いと思った。よほど父親が作ったカレーの味が忘れられなかったのかもしれない。
 私もインド系の人たちのどこの家にもあるスパイス入れを購入し、スパイスの名前と使い方を学ぼうと思う。


スパイス入れ。最も基本的なスパイスが入っている。粉にしたものと種。