Mwenge Keikoのつれづれ日記

アフリカの人びとや文化の出会いを通して

6月9日、映画「ブラック・スワン」を観る

 朝から午後7時まで仕事に追われる一日だった。夕食をすませて映画「ブラック・スワン」を観に行った。新京極の中にあるMOVIXだ。
 『ブラック・スワン』の主演女優は、ナタリー・ポートマンは、今年の第83回アカデミー賞主演女優賞を受賞して、話題を呼んだ作品だ。子ども時代にクラシックバレエを習っていたこともあり、「白鳥の湖」の主役を猛特訓をうけ、演じきった。迫力があった。
 私の娘も9年間クラシックバレエを習っていたこともあり、バレエの舞台には馴染みがあった。随分昔にロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスで「白鳥の湖」を観て、大感動した。総勢何十人もの白鳥のなかで、主役として踊るということがどれぼど名誉なことか。
 「ブラック・スワン」は、ニューヨークのバレエ団に所属するニナは「白鳥の湖」の大役に抜擢される。母親は元バレエリーナだったが、ニナを妊娠したために、バレエをあきらめた。母親はニナをバレエリーナに育て上げた。この映画のすざましさは、ニナが主役に抜擢されたあとに、強度の不安とストレスから、精神がおかしくなっていく。この展開がすさまじい。サイコスリラー映画ということらしい。
 ニナはアダルトチャイルドなのだ。厳しい母親のもとで育つが、抑圧を抱え込んだニナは身体をかきむしったり、爪をかんだりしてきた。母親はニナの子どもの頃からのこうした習性を監視し、ベッドのそばで見守りつづけた。枕元には、「白鳥の湖」のオルゴールを聞きながら眠りにつく。母親の望みどおりに、「白鳥」を完璧に踊れるようになった優等生のニナは、もうひとつの役である、官能的な『黒鳥」はどうしても踊れない。さまざまな努力をするがダメ。監督からエロスを感じるために、自慰行為を命じられる。母に反逆し、次第に自己の内面に入り込み、どんどんとおかしくなっていく。足の爪が割れたり、幻聴をみたりするようになる。
 おそらくこの作品は、性への抑圧からどう解放されるかを問うているように思える。母親に対してはいつも優等生であろうとする一人の人間と、母親の厳しい監視からの解放を願うもう一人の人間が、ニナの内面で激しく葛藤する。映画の中では、バレエのレッスンからの帰りが遅くなると、たえず母は娘の携帯電話にかけてくるが、ニナは反抗し、電話を無視する。また、主役に選ばれたお祝いにケーキを買って来た母親に対して、食べたくないという。体重が増えることを気にして好きなケーキも拒否する。このあたりも拒食の傾向がみられる。身体の内部でさまざまなことが起こっているのだが、懸命にレッスンに励むがうまくいかずに、悩みつづける。
 あげくの果てには、幻聴や自らが作り出すイメージに悩まされ、精神と肉体が崩れていく。痛ましくてみていられないが、初日の舞台で成功をおさめる。母は観客の一人として娘を見守り、ニナにもようやく一人の人間としての達成感を得たことで、自己回復する。