Mwenge Keikoのつれづれ日記

アフリカの人びとや文化の出会いを通して

10月20日 ウォーレ・ショインカさんの講演

 10月20日京都精華大学ノーベル文学賞の受賞者ウォーレ・ショインカさんが講演をした。朝日新聞社主催の行事だったが、今京都精華大学の学長ウスビ・サコさんはアフリカのマリ出身で日本で初のアフリカ人学長なので、この催しが実現した。

 まずショインカさんの基調講演があった。続いて、ショインカさんとサコさん二人のアフリカ人が、朝日新聞社の安東建さんの司会で、対談という形式をとった。残念なのは、会場からいくつもの質問があったが、それらはうまく利用されず、会場との対話ができなかったのは残念だった。

 公表されていたシンポジウムのタイトルは、「グローバル化された世界における「表現」の未来」だったが、「表現」の話題というよりは、主として「教育」の問題を中心に話された。

 ショインカさんは自らの経験から科学する心の重要性を語った。科学的に、論理的に思考する道筋と、創造力を開発する努力とは矛盾しないものだという。人間は進化の過程にいて、まだまだ成長していかなければならない。そのためには様々に巡らされた境界線を越えていく努力が必要だという。何ものにも囚われず、挑戦していく精神が大切だと語った。

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ショインカさんに最初に出会ったのは、1986年ノーベル賞を受賞した翌年だったと思う。たまたま訪れていたロンドンのコベント・ガーデンにあるアフリカ・センターの螺旋階段で出会った。簡単な挨拶を交わしたあと、ショインカさんはすぐに日本に行くよと言われた。大阪で開催されされた「人類の創造力は永遠か」(大阪青年会議所毎日放送毎日新聞社共催)の国際シンポジウム(大阪国際交流センター)に招待されていた。その直後、宮本正興がショインカと対談し、その様子は毎日新聞に掲載された。極めてインテレクチュアルな人だが、誰にでも優しく接する人だという印象を得た。

 その後も、私が参加するアフリカ文学会にも招待され、スピーチをされた。ショインカさんの妹が働くカンサス大学や、最近ではドイツのバイロイト大学にもこられた。昨年はロンドン大学で開催された「マケレレ大学会議から50年」のシンポジウムでスピーチをされた。そこでもお会いした。今年84歳になられるが、全くずっと同じく年齢を感じさせない、声には張りがあり、主張は明晰だった。

 かなり前には、ナイジェリアの詩人で環境問題の活動家ケン・サロウィワが公衆の面前で処刑されたとき、ナイジェリア政府に抗議して亡命した。そして最近ではアメリカではトランプが大統領になったことで、アメリカのグリーンカードを返還した。表現の自由を求めて、現実の政治状況とも闘ってきた人だ。

 私が京都精華大学に勤めていた頃には、二度アフリカ人作家会議を開催し、ケニアの作家グギ・ワ・ジオンゴや、南アフリカの作家デニス・ブルータス、ウィリー・コティティレ、チナ・ムショーペなどが熱くアフリカ人作家としての役割を語った。それと同じ場所で、ショインカが私たちに向けて語っていることを感慨深く受け止めた。

 久しぶりに、東京、広島、大阪、奈良などから駆けつけた日本のアフリカ文学研究者とも出会えた。京都精華大学に感謝。

 会議終了後、京都駅の近くでショインカさんを交えて、夕食会があった。私はショインカさんの妹さんとも友人であることを伝えると、携帯電話を取り出し、電話をしようかと気さくに言っていた。とてもチャーミングな一面を見せる。写真はその時のもの。